ドラッグストアの棚でグリコール酸配合の角質ケアを手に取ったとき、「濃度は何%か」だけ見て決めていませんか?多くの人が濃度とブランドで選んで、それ以外の情報にはたどり着けないですよね。
でも実は、同じ「グリコール酸」でも作り方(製法)が違うと、肌への刺激が変わる可能性が指摘されています。化学式が完全に同じ分子なのに、です。ここ数年、カナダのバイオ企業が発酵由来のグリコール酸を発表し、従来の石油系との刺激データを比べた研究が業界で話題になりました。
この記事では、The Ordinary 30%ピールで一気に知名度が上がったグリコール酸を題材に、「発酵由来 vs 石油系(ホルムアルデヒド由来)」という製法の違いを整理します。読み終える頃には、濃度以外に「原料由来」というもう一つの物差しを持って製品を選べるようになるはずです。
・グリコール酸はAHA(アルファヒドロキシ酸)の一種で、1930年代にDuPontが開発した角質ケア成分。The Ordinary 30%ピールがきっかけで需要が広がり、市場は年約6%成長している
・従来のグリコール酸はほぼすべてホルムアルデヒドなどを出発原料に製造され、最終分子は同一でも「不純物のプロファイル」が製法で異なる
・発酵由来のグリコール酸はIL-1α刺激試験(SOFW誌掲載)で、石油系より刺激マーカーが統計的に低い結果が報告されている
グリコール酸とは?90年変わらない製法の話
グリコール酸とは、AHA(アルファヒドロキシ酸)に分類される角質ケア成分で、分子量が小さく角層にアプローチしやすいのが特徴です。1930年代に米国のDuPontが開発して以来、ドラッグストアの化粧水から高濃度ピールまで幅広く使われてきました。
面白いのは、この成分の製造方法が90年近くほとんど変わっていないという事実。安くて効率的な製法が早い段階で確立されたため、多くの処方担当者も、化粧品を買う私たちも、「どう作られているか」を気にする機会がほとんどなかったんです。
グリコール酸が支持される理由(角質ケア成分としての位置づけ)
グリコール酸がここまで定番化したのには理由があります。AHAの中でも分子構造がコンパクトで、古い角質へのアプローチ役として扱いやすい。くすみやざらつきが気になる肌のケア成分として、長年ポジションを守ってきました。
角質ケア成分としてのグリコール酸の立ち位置は、AHAやBHA、PHAといった他のピーリング成分との比較で理解するとわかりやすくなります。それぞれ分子の大きさや水溶性が違い、肌への当たり方も変わるため、成分ごとの違いは別記事でも整理しています。グリコール酸はその中で「王道AHA」として語られる存在です。
ただ、定番であるがゆえに「グリコール酸なら中身はどれも同じ」というイメージが広がりました。ここに、この記事で掘り下げる盲点があります。
The Ordinary 30%ピールが火をつけた需要の広がり
グリコール酸が改めて注目を集めた転機が、The Ordinary 30% Glycolic Acid Peel(30%グリコール酸ピール)でした。コロナ禍のセルフケア需要が高まった時期に米国でバズり、その流れで角質ケア成分としてのグリコール酸そのものへの関心も一気に広がったんです。
需要の伸びは一過性では終わりませんでした。市場はその後も年およそ6%のペースで成長を続けているとされています。高濃度ピールから低刺激トナーまで、選択肢が増えたぶん「どれを選べばいいか」という悩みも深くなりました。
ここで多くの人が濃度スペックだけを比較軸にします。30%なのか、7%なのか。もちろん濃度は大切な指標。でも実は、それと並ぶもう一つの軸が「その分子がどう作られたか」なんです。次のセクションで、その中身を分解していきます。
「化学的に同じ」でも肌反応が違う理由|不純物プロファイル
グリコール酸は、作り方が違っても最終的にできあがる分子そのものは完全に同一です。化学式で見れば区別がつきません。それなのに肌での反応に差が出るとしたら、原因は分子本体ではなく「一緒に残るもの」にあります。それが不純物プロファイルという考え方です。
従来のグリコール酸は、そのほぼすべてがホルムアルデヒドやモノクロロ酢酸を出発原料として製造されます。安価で効率的なこの製法は、100年近く業界標準として使われてきました。問題は、製造工程で生じる微量の不純物の「顔ぶれ」が、原料や工程によって変わってくる点にあります。
なぜ分子構造が同じでも挙動が変わるのか
「化学的に同じなら、肌の上でも同じように働くはず」——直感的にはそう思いますよね。実際、有効成分としてのグリコール酸分子は、発酵由来だろうと石油系だろうと同じ仕事をします。
ところが製品は、純度100%の単一分子でできているわけではありません。ごく微量の副生成物や残留物が必ず一緒に存在します。この「おまけ」の種類と量が製法ごとに違い、それが肌への当たり方に測定可能な差を生む、というのがカナダのバイオ企業Phycus社が示した視点です。
つまり比較すべきは「グリコール酸か否か」ではなく、「どんな不純物プロファイルを背負ったグリコール酸か」。同じ名前でも中身の周辺情報が違う、という発想の転換が必要になります。
なお、グリコール酸製品は一般的にpHを酸性側(およそ3.5前後)に設計し、配合濃度も製品タイプで幅があります。数値の設計そのものが肌への刺激に関わるため、濃度・pH・不純物という3点セットで見るのが本来の姿なんです。
従来製法(ホルムアルデヒド由来)に残る不純物とは
従来型グリコール酸の出発原料であるホルムアルデヒドは、それ自体が刺激性で知られる物質です。最終製品の分子はグリコール酸に変換されているとはいえ、製造の過程でどんな微量成分が残るのか——ここが長らくブラックボックスでした。
石油由来の原料を使う従来製法では、こうした微量の副生成物が不純物として残りやすいと考えられています。量としてはごくわずかでも、角質ケアという「肌にあえて働きかける」用途では、その微差が使用感に響く可能性があるわけです。
ここに一石を投じたのが、発酵由来という新しい製法でした。石油原料に頼らず、微生物の発酵でグリコール酸をつくる。不純物の顔ぶれそのものを変えてしまうこのアプローチが、刺激データの比較でどんな差を見せたのか。数字と試験名を添えて、次で具体的に見ていきます。
| 項目 | 発酵由来グリコール酸 (Purolic Acid) |
従来型グリコール酸 (石油系) |
フルーツエキス |
|---|---|---|---|
| 出発原料 | アップサイクル木材・廃糖蜜を微生物発酵 | ホルムアルデヒドまたはモノクロロ酢酸 | 果実由来の抽出成分 |
| グリコール酸の分子構造 | 同一 | 同一 | 混合物(単一分子ではない) |
| 不純物プロファイル | 発酵由来の副生成物 | 石油由来の微量副生成物が残りやすい | 果実成分ごとに多様 |
| IL-1α刺激マーカー (SOFW誌報告) |
比較群の中で最も低い | 発酵由来より高い | 発酵由来より高い |
| 日本での入手性 | 現時点では限定的 | 広く流通 | 広く流通 |
表のいちばんの読みどころは、いちばん下ではなく真ん中の行。分子構造は同じでも不純物プロファイルが違い、その差がIL-1αという測定値に表れている、という流れです。ここが「グリコール酸か否か」ではなく「どんなグリコール酸か」で選ぶ根拠になります。
IL-1α試験で見えた発酵由来の低刺激性
IL-1αは、肌の細胞がストレスを受けたときに放出される炎症関連のシグナル物質。この数値が低いほど、細胞レベルでの刺激反応が穏やかだったと解釈できます。感想やモニターアンケートではなく、生物学的な指標で比べている点が従来の「使ってみた印象」とは決定的に違うところ。
発酵由来を手がけるPhycus社は、この製法の意義を業界ポッドキャストの対談でこう述べています。
製造プロセスは重要であり、それがより良い最終製品を生み出す。(Phycus Biotechnologies、Formula Botanica Podcast 対談より)
出典: https://formulabotanica.com/podcast-glycolic-acid/
もちろん、これはメーカー側が自社成分について語った見解です。ただ、その主張がSOFW誌という第三者の場に測定データとして提出されている点は、単なる宣伝文句とは重みが違います。読者としては「メーカーが言っている」で止めず、「どの試験で、どの指標が、どう出たか」まで見るクセをつけると判断がぶれません。
「天然=低刺激」神話とのズレ
「フルーツ由来だからやさしそう」——なんとなくそう感じる人、少なくないですよね。ところがPhycus社の比較では、発酵由来グリコール酸は人気のフルーツエキスよりも刺激マーカーが低いという結果が出ています。
これは天然志向を否定する話ではありません。ポイントは、「天然か合成か」という入口の分類が、肌への当たりやすさを保証してくれるわけではない、ということ。果実の抽出物は多くの成分が混ざった複雑な組成で、その中には刺激になりうる要素も含まれます。一方で発酵という工程は、不純物の顔ぶれをコントロールしやすい。原料のイメージではなく、実際の不純物プロファイルと測定値で見るほうが実態に近いわけです。
つまり選ぶ物差しは「ナチュラル/ケミカル」の二択から、「不純物まで管理された設計か」へ。ここが今回いちばん持ち帰ってほしい発想の転換なんです。
グリコール酸製品の選び方|低刺激設計とサステナビリティ
では読者が実際に店頭やECで選ぶとき、何を見ればいいのか。結論から言うと、判断軸は「原料由来」「濃度・pHの明示」「パッチテスト前提」の3点です。
正直なところ、発酵由来のPurolic Acidを配合した製品は、日本での入手が現時点ではまだ限定的。だからこそ「発酵由来を探す」より先に、手に入る製品を賢く見極める視点が要ります。
・二の腕の内側など目立たない部位に少量を塗る
・24時間ほど様子を見て、赤み・かゆみ・強いヒリつきが出ないか確認する
・問題なければ顔でも低頻度(週1回程度)から始め、肌の反応を見ながら間隔を詰める
・少しでも異常が出たら使用を中止し、症状が続く場合は皮膚科への相談をおすすめします
原料由来と設計をチェックする視点
まず見たいのが、濃度とpHがきちんと表示されているか。グリコール酸製品は一般的にpHを酸性側(およそ3.5前後)に設計し、濃度は製品タイプで幅があります。この数値が明示されている製品は、設計に対して透明性が高いと考えられます。逆に「AHA配合」としか書かれていない製品は、強さの見当がつきません。
The Ordinaryのように濃度を製品名に出しているブランドは、その点わかりやすい部類。角質ケア初心者なら、いきなり高濃度ピールに手を出すより、低〜中濃度のトーニング系から慣らすのが現実的な入口です。
環境負荷40%削減という選択軸
もう一つ、これからの選び方に加わりそうなのがサステナビリティの視点。発酵由来グリコール酸は、石油原料に頼らず、FSC認証を受けたアップサイクル木材や廃糖蜜を発酵の原料に使います。Phycus社は、この製法によって従来プロセス比でカーボンフットプリントを約40%削減したと説明しており、その根拠としてライフサイクル分析を挙げています。
肌へのやさしさと環境負荷の低さが同じ製法から来ている、という構図はこれまでのグリコール酸には無かった切り口。日本での本格流通はこれからですが、「低刺激と低環境負荷を両立できるか」は今後の選定軸になっていくはずです。
まとめ:グリコール酸は「濃度」だけでなく「製法」で選ぶ
今回の要点を振り返ります。
- グリコール酸の分子構造は製法を問わず同じだが、不純物プロファイルは製法ごとに違う
- 従来型は石油系原料(ホルムアルデヒド等)由来の微量副生成物が残りやすい
- 発酵由来のPurolic AcidはIL-1α試験で、石油系・フルーツエキスより刺激マーカーが低かった(SOFW誌)
- 「天然=低刺激」ではなく、不純物まで管理された設計かで見るのが実態に近い
- 発酵由来は日本での入手が限定的なため、当面は濃度・pH表示とパッチテストで選ぶ
編集部としては、グリコール酸は濃度スペックだけで比べる時代から、製法・不純物・原料由来まで含めて選ぶ時代に入りつつある、と見ています。化学構造が同じでも中身の周辺情報が違う。この一点を知っているだけで、同じ棚の製品を見る目が変わるはずです。
この記事で触れた製品の選び方
具体的な製品を選ぶときは、以下の基準で絞り込むのが実用的です。
| 製品例 | 選ぶ基準・根拠 | 向いている人 |
|---|---|---|
| The Ordinary Glycolic Acid 7% Toning Solution | 濃度(7%)を明示。低〜中濃度で角質ケアに慣らしたい入門向け設計 | グリコール酸を初めて日常使いする人 |
| The Ordinary 30% Glycolic Acid Peel | COVID期にバズった高濃度スペシャルケア。使用は低頻度・短時間が前提 | 低濃度に慣れ、週1のスペシャルケアを足したい人 |
グリコール酸配合製品を選ぶときは、まず濃度とpHが明示されているかを確認し、可能なら原料由来(発酵由来か石油系か)の情報もチェックする。この2段階で見れば、価格やイメージに流されず「自分の肌に合う一本」に近づけます。
よくある質問(FAQ)
グリコール酸の選び方・使い方について、読者からよく挙がる疑問をまとめました。
グリコール酸の適切な使い方は?
低濃度の製品から始め、週1回程度の頻度で肌の反応を見ながら間隔を詰めるのが基本です。夜のスキンケアに取り入れ、日中は紫外線対策を併用しましょう。初回はパッチテストを行ってから顔に使ってください。
発酵由来と石油系で、効果は変わりますか?
グリコール酸の分子構造は同じなので、角質ケアという働き自体は共通です。違いが出るのは不純物プロファイルで、SOFW誌に発表された試験では発酵由来のほうがIL-1α刺激マーカーが低い結果でした。効果より「刺激の起こりにくさ」で差が報告されています。
フルーツ酸となにが違うのですか?
グリコール酸はフルーツにも含まれるAHAの一種ですが、精製されたグリコール酸は濃度や設計が管理しやすいのが特徴です。Phycus社の比較では、発酵由来グリコール酸はフルーツエキスより刺激マーカーが低いという結果も出ており、「天然だからやさしい」とは限りません。
敏感肌でも使えますか?
肌質には個人差があり、刺激を感じやすい人は慎重な導入が必要です。低濃度・低頻度から始め、必ずパッチテストを行ってください。赤みやヒリつきが出る場合は使用を中止し、症状が続くなら皮膚科への相談をおすすめします。
The Ordinaryの30%ピールはどんな人向けですか?
30%は高濃度のスペシャルケア用で、角質ケアに慣れた人が短時間・低頻度で使う設計です。初めてグリコール酸を使う人には、まず低濃度のトーニング系で肌を慣らすほうが向いています。いきなり高濃度から始めるのは避けたほうが無難です。
発酵由来グリコール酸は日本で買えますか?
現時点では、発酵由来のPurolic Acidを配合した製品の日本での入手は限定的です。当面は流通量の多いグリコール酸製品の中から、濃度・pHが明示され、低刺激設計を意識したものを選ぶのが現実的な選択になります。
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執筆・編集: 美容図鑑編集部 / 公開日: 2026-07-13 / 最終更新: 2026-07-13
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